E34 M5のクラッチ交換について紹介します。

入庫したM5は、クラッチ盤の消耗によりクラッチが滑ってしまっているため交換となりました。

クラッチが滑るという言葉は、AT車が大半を占める現在ではあまり耳にしたことが無いかもしれませんのでちょっとだけ解説しますね。

MT車はシフトチェンジをする際にクラッチペダルを踏み込みますよね。

このクラッチを切るという動作により、エンジン側の動力とギアボックス側が切断状態になります。(ニュートラルポジションも切断状態です)

ギアを入れ半クラ操作で踏み込んだクラッチペダルをゆっくりと放してくと、切り離されてたエンジン側動力とギアボックス側が接続されます。

エンジン側動力を急激にギアボックス側に伝達するとギアボックス側への負荷が大きくなるため、半クラ操作でクラッチ盤の摩擦抵抗を緩衝材として滑らせながら徐々に伝達していくんです。

ここまでの解説を見て、いやいや半クラ操作でクラッチ盤を意図的に滑らせながら使用してるのに、何で”クラッチが滑る”が問題なの?と思う方も多いでしょう。

前置きが長くなりましたが、ここから”クラッチが滑る”という問題についての説明になります。(最初に仕組みを知っておかないと分かり難いかなと・・・)

シフトチェンジの際の半クラ操作により、クラッチ盤はエンジン側動力軸とギアボックス側の間で摩擦を受けることで徐々にですが磨耗していきます。

磨耗と言ってもブレーキパッドやローターのように数万キロ単位で交換が必要になると言うレベルのものではありませんが、摩擦によって磨耗するクラッチ盤は消耗部品の1つなんです。(BMWに限ってではありません)

そして、磨り減り切ってしまったクラッチ盤は、摩擦抵抗が規定値よりも低下し緩衝材としての本来の役割を果たせなくなります。

この状況を”クラッチが滑る”と表現しているんですね。(要するに滑りすぎるんですね)

交換のため取り寄せした部品がこれです。

M5-cr1

クラッチキットの他、レリーズフォーク、レリーズシリンダー、マスターシリンダー、クラッチホース等についても、年式と走行距離を考慮してまとめて交換することにしました。

因みに、まとめて交換することにしたクラッチのレリーズフォークやレリーズベアリング、レリーズシリンダー等の部品は、ミッションのフロント側(エンジン側)に取り付けられる部品です。

M5-cr2

クラッチが滑ってくるとクラッチペダルの遊びが少なくなる他、エンジン側からの動力伝達ロスが発生するため、アクセルを踏んでもパワー・スピードが出ないといった症状が現れます。

Mシリーズは、”いつかはM”とBMWオーナーなら誰もが憧れるスーパーカーですよね。

そのため、今回作業したE34 M5やE36 M3も未だに根強い人気があり、コアなファンも沢山いることから10万キロ越えなんて当たり前な世界になっています。

ハイパワーな車ほどクラッチ盤への負荷は大きく、走りを追求したMがゆえにサーキット走行などで酷使されればクラッチ盤の消耗も激しいと言えます。

クラッチが滑ってしまっている状態では、”いつかはM”の憧れで手に入れたM本来の走りを体感することはできません。

Mを含むMT車で、クラッチペダルの遊びが少ない、アクセルを踏んでもパワー・スピードが思うように出ないといった違和感を感じるようであれば、BMWを熟知する元BMW正規ディーラーメカニックが多数在籍するつたえファクトリーに是非一度ご相談ください!!